『泣く競馬』
 離婚した男、安夫から未知の元に電話がかかってくる。腰を痛めてまったく動けないという。頼みがあるからと来てみたら、馬券を買ってきて欲しいと言われる。なんだかんだといいながら、動けないまま復縁を迫る男。ダメな男のダメダメな瞬間を描いたもの。

 これに出ている役者の中村良平というのが、いつも「じんの氏、ちょっと考えたんだけどさあ」と、お話を作って持ってくるんです。いつも「お話は私が作るからいいんだって」と再三言っているんですが、それでもまだ「思ったんだけどね」と考えてきた話を披露してくれるんです。まあ、たいていそうやって役者が話を作ってしまうと、実際には使えないんです。良平が持ってきた話も同じです。次から次ぎへと却下です。結局、採用になったのは、明転した瞬間に変なかっこうで横たわっていたい。という事だけでした。これはそこから広げていった話です。そういうことからでもお話を作ることは可能だという見本です。そこから別れた女房との関係性などを緻密に考えていけば、なんとかなるものです。お話を作るとっかかりには、様々なものがなりうるのですが、どっかで聞いたことある話、作った話だけは役に立ちません。

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